旅行会社こぼれ話 第27話 |
伊丹空港、大好き!!!
もう、あれこれ10年も前になるでしょうか。とにかく汗まみれになりながらもお客様の前では、何事もなかったかのように振る舞っていた出来事がありました。
タイの某中堅銀行ご一行様の添乗で日本へ行った時の話です。
タイ人ばかりの一行の半分近くは重役とその家族の方々。お国柄、世間では俗に言われる"お金持ち" の方々です。諸事情あり、とにかくVIP扱いの必要なお客様で、しかも彼らの物の考え方だと、例え添乗員であっても荷物などはポーターなどを使うべしとの事。
こりゃ大変だと思いながらも、ほぼ日本での日程を無事にこなして次の訪問地である香港へ向かうべく、大阪は伊丹空港での出来事。
お客様をベンチのあるエリアへ誘導して、トイレの場所や自動販売機の使い方やらを伝えて、
「チェックインに1時間の時間を下さい。完了したら戻って来ます。」
と勇ましくチェックイン・カウンターへ。
そこで私が目にしたものは、荷物の山! まさに山! カウンターなど、これっぽちも見えないほどの、まさしく荷物の山、山! ちょうど日本の連休と重なり、その荷物の数や、なんたる数であることか!私の身長とほぼ同じ高さに積まれた荷物がフロアー中にあるのだ!
受け入れ旅行社のヘルプのスタッフの姿も見えず、荷物の合間と言うより荷物の上やらわずかな間隙を移動して、やっとの思いでカウンターへたどり着く有り様。そして、そのカウンター担当者のセリフがこれまたニクイ。軽い口調で事務的にいわく、
「添乗の方ですね、じゃあ荷物をカウンターの前に持ってきて下さい。」
えっ!? ここまで持ってこいって!? お客様の人数は40名弱、預ける荷物は24個。どれも重い。だがヘルプはいない。時間もない。やるしかない。
それから約40分間、私は単独で24個もの荷物をひとつずつ、他の荷物の山を越え、谷を越え、カウンターの前まで運び切ったのである。日本は夏。ノドはカラカラ、両手は荷物の重さでふるえ、足はあちこちにぶつけ、身体中汗まみれ!
「に-----に---荷物は、ぜ---ぜ----全部で---、に----に---24個---です。」
「わかりました。じゃ重さ計りますから台に載せて下さい。」
グワァァー! 日本にはポーターはいないのか?ポーターは?
約1時間15分後、全てが終わり、ゼーゼーハーハーの状態を必死に取りつくろって"お金持ち"の余裕のある振る舞いに接するべく冷静を装い、
「お---お---お客様、た---た---大変おお待たせしました。」
「あんた、マラソンでもしてきたの!?」
もちろん私は何事もなかったかの如く笑顔を振りまき、出発ラウンジへご案内してから物静かに言いました。
「さあ、香港まで参りましょう。」
香港の空港ではポーターを3人はやとうゾ!と心に決めながら-------。