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旅行会社こぼれ話 第20話

恐るべしインド人

ビジネスの世界では中国人とインド人を相手にできれば一人前というようなことをおっしゃる方がいらっしゃいます。確かに中国やインドの方は交渉力にたけていると思います。

そんなつわもの達を育てる土壌と添乗員のささやかな抵抗の一例をご紹介します。

添乗員として28人のお客様とインド・ニューデリー空港に降りたったのは既に午前0時を少し過ぎていました。いつも通り時間のかかる入国審査を無事に終え、バスでホテルに向かいます。車内では、前回と同じガイドさんがいつも通り、滞在中の注意をお客様に説明しています。部屋のカギはカード式!だとか、国際電話を掛ける時はオペレーターに頼む!とか、生水は飲まないように!とか......。

バスは予定通り、午前1時15分にホテルに到着。
チェックイン手続きは予めガイドさんにしてもらっているので、お客様にはレジストレーションカードにサインだけをいただき、明朝の出発案内をしてお部屋に入っていただく。私はロビーでしばらくガイドさんと翌日の打ち合わせをしながら、お客様から部屋内で問題があった場合の連絡を待つ。30分ほど待って何も連絡が無ければ、添乗員としては一安心である。そして通常の添乗なら、ここで自分も部屋に入りシャワーでも浴びて寝るところです

しかーし、インド添乗のリピーターである私は違うのです。

おもむろにロビー横にあるコーヒーショップへ行き、ビールを頼むのです。もちろん銘柄は北インドで最もポピュラーな 『キングフィッシャー』 。インド添乗で唯一の楽しみはこのキングフィッシャーを飲めることです。

カラカラに乾いた喉を待たせていると、まもなくウエイターがやってきて私の目の前にグラスにそそがれた美味しそうなビールを置きます。私はウエイターを目の前に待たせたまま、グラスを手にします。そして言うのです、

『このビールは全く冷えていないじゃないか!』

以下、会話。

ウエイター : 「だってあんたは冷たいビールをとは頼まなかっただろ。」

私 : 「そんなこと言わなくたって当たり前じゃないか。いいから冷えたビールを早く持って来い!」

ウエイター : 「分かった。」

2分後、ウエイターが再びビールを持ってくる。しかし、今度はビールがビンのなかで凍っていて飲めないのである。

私 : 「こんな凍ったビールが飲めるか!」

ウエイター : 「だってあんたは冷えたビールを持って来いと言ったじゃないか!」

私 : 「それは言ったが、凍っていたら飲めないじゃないか!」

ウエイター : 「だったら始めっから、ちょうど良く冷えて飲みごろのビールを持って来いと言えばいいじゃないか!」

私 : 「わかったよ!でも俺は今日からしばらくこのホテルに泊まるから、おれがただビールを持って来いと言った時は、ちょうど良く冷えて飲みごろのビールを持って来いという意味だと思ってくれ!いいな!」

と言い、少々のチップを渡すのです。

翌日からお客様と一緒にコーヒーショップに行くと、必ずかねてのウエイターがすかさず現れ、ちょうど良く冷えて飲みごろのビールを持ってくるのです。

そうです、すべて計算とおり。実は毎回インド到着日にこんな会話をしているのです。目的はレストランのウエイターに顔を覚えてもらい、更に交渉力と経済力を示し、一緒にいるお客様にスムーズな接客をさせるためです。

この会話からも分かるように、インドではお客様は神様ではありません。たった一杯のビールを頼むだけでもたやすく議論になり、そしてその際は客とウエイターの立場を超えて50:50の立場で交渉をしなければいけないのです。

ビール一杯でこれですから、大きなビジネスともなれば.......。もうお分かりですね!

では、また。

Written by 業界人