アジアの風だより 第91話 |
ベトナムの高原都市 ダラット
海と山にはさまれ、南北に細長く延びたベトナム。その国土は豊かな自然にあふれています。
ダラットの街はベトナム南部にあります。ベトナムの南部はタイに似た気候で気温と湿度は常に高いはずですが、高い山の中にあるダラットは違います。標高1500メートル前後の高地に位置するこの街の気候はまさしく高原地帯のもの。空気は澄み、適度に乾いていて、いつもさわやか。たとえ気温が高くても、どこか気持ちいいのがこの街の特徴です。
植民地時代にフランス人が避暑地として開発しただけに、ほかのアジアの街とは違う独特のヨーロッパ的雰囲気がここにはあります。ベトナム人の間では新婚旅行の理想の地とされていますが、日本で言えば軽井沢といったところで、この街に漂うロマンチックな空気は二人の幸福感をさらに高めてくれることでしょう。南部の大都市ホーチミン・シティからバスで約8時間、飛行機なら1時間もかかりません。この距離の近さも魅力です。
街の真ん中にはスンフーン湖と呼ばれる大きな湖があります。湖にはボートが浮かび、周辺には観光用の馬車を引く馬たちが草を食んでいます。娯楽はあまりありませんが、静かでのどかなこの景色は、だれの心もなごませてくれることでしょう。
季候ははっきり山のものといってよく、いくら日中に暑くなっても、夜は気温がぐっと下がります。11月から1月にかけてはまったくの冬となり、雪こそ降りませんが、朝晩は防寒具なしでは外に出られません。この時期にダラットに来たら、ここが東南アジアの国であることが信じられなくなるはずです。
こうした季候を利用して、郊外では高原野菜や花々が栽培されています。ビニールハウスで埋めつくされた周辺の風景は、まるで富士山のすそ野のよう。日本人にはどこか懐かしい、胸のすくような光景が目の前に広がります。
都市ばかり見て歩くのがベトナムの旅行ではありません。新しい風景や世界を見たいなら、足を延ばして地方の街へも行ってみたいものです。
●国名: ベトナム
●都市名: ラムドン省
●行き方:
空路は国際線の乗り入れがないため、ベトナム国内線を利用する。ハノイ、ホーチミン、ダナン間に便があるが、便利なのはホーチミンからで、所用約40分。陸路はホーチミンからバスで約8時間。ニャチャンからは約4時間。