アジアの風だより 第84話 |
スリンの象祭り
スリンはタイ東北部イサーン地方南部の小さな町で、県内のあちこちにアンコール王朝時代に築かれた石造りの寺院跡が残されている以外はあまり目立つところがありません。普段は遺跡観光以外では注目されることもありませんが、毎年10月から11月の間に行われる象祭りの期間中だけは別で、このときばかりはタイ国内はもとより世界中から観光客が押し寄せます。
人口が一瞬にして何倍かにふくれあがったように大勢の観光客が繁華街を歩きます。小さな町ですから大変なにぎわいですが、その程度で驚いていてはいけません。象祭りの期間中は観光客だけではなく、巨大な象も町を歩きます。それも一頭や二頭ではありません。ぞろぞろと何頭もの象があちこちを歩き回るのです。
象祭りのメイン会場は繁華街の端にあるスポーツスタジアムです。普段は人間がサッカーの試合などに使いますが、象祭りのときは象がここでサッカーをします。踊ったりお芝居をしたりもしますが、巨大な象が走ったり踊ったりする様は見ていて壮観。子どもでも軽自動車なみの体重がある動物ですから迫力は充分以上。さらにはお絵描きをしたり歌ったり(!)と、もはや動物とは思えない知的活動まで披露してくれます。
スリンには象を使役する象使いが住む集落があります。彼らは独自の言語で象と話し、コミュニケーションを取りながら協調して暮らしていました。その伝統と技術が現在のタイで生かされ、本拠地のあるここで大きな祭りが開かれるようになりました。
この象祭りはタイの象にとってのオリンピックのようなもので、当日は全国各地から象が集まり、技と芸を披露します。巨大な象が町のあちこちをノシノシ歩く光景を見られるのはここスリンの象祭りだけ。これは一度は行きたい、見てみたい祭のひとつと言えるでしょう。
*2012年の象祭りは11月15日から18日までの4日間開催されます。詳細はタイ政府観光局のホームページでご確認ください。
スリン・エレファント・ラウンドアップ・ショー2012
●国名: タイ
●都市名: スリン
- 行き方 -
バンコクの北バスターミナルから直行バスが出ている。鉄道はフアラムポーン駅から特急、急行、普通列車が出ている。駅は繁華街の真ん中にあって便利だ。
*ただし象祭りの期間中はバス・鉄道ともにほぼ満席となり、周辺の道路も非常に混雑してアクセスしにくくなる。