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アジアの風だより 第248話

高齢者のひとり旅

高齢化社会と呼ばれるようになって久しくなりますが、これは日本に限った話ではありません。医療技術が発展し、人間の寿命が全体に延びている現代では、世界全体が高齢化しています。旅行の世界も例外ではなく、タイの街をぶらぶらしていると、それを実感することができます。

たとえばバンコクにはかつてバックパッカーの聖地と呼ばれたカオサン通りがありますが、ここは特に顕著で、以前はほとんど見ることができなかった高齢者のカップルをあちらこちらで目にします。この通りに観光バスで乗り付ける団体がいる時代ですから不思議ではないのかもしれませんが、若者と高齢者の比率は明らかに逆転しています。これはたぶん、すべての観光地でそうなっているのではないでしょうか。

高齢者が元気なのは喜ばしいことですが、問題は健康や体調が若者たちとは比べものにならないほど衰えていることです。こう書くと「おまえはなにを言っているんだ」と叱られそうですが、そういう人ほど自分を知りません。アクセルを踏み間違えて商店に車で突っ込んでしまう方の大半はこのタイプでしょう。そこまでいかないにしても、そういう勢いで昔取った杵柄を思い出し、荷物を背負って海外に旅立つ高齢者が増えていると言いますか、目立ちます。それももちろん問題はありませんが、昔以上の用心が必要なのは車の運転と同じです。

高齢の旅行者が増えるのと比例して、彼らが医療機関の世話になる事例がタイ国内で増えています。私の周囲でも国籍を問わず頻繁に目にするようになりました。幸いにも亡くなられた方はいませんが、その寸前で帰国となった方なら大勢います。

もし海外でそのような事態になった場合の命綱は保険です。タイは物価の安い国ですが、医療費だけは別で高額です。医薬品の類も非常に高く、保険に加入していない外国人は、ほとんどの場合、支払いができません。医療機関によっては支払い能力のない怪我人や病人は平気で門前払いします。それでも文句を言えないのが世界の常識なのです。

若いときにできなかった夢や願望を実現するために、いまこの瞬間に旅に出ようとしている方もおられるでしょう。ただそのときは「もしもの場合」の準備を必ずしておいてください。特にひとり旅では要注意。「行けばなんとかなる」のは30代まで、40代でギリギリでしょうか。それ以上になったら「行ってしまったらどうにもならない」と考えるのが転ばぬ先の杖というものです。

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