アジアの風だより 第208話 |
いまもマスクははずせない
2月になりました。旧正月にあたる春節は先月中旬に終わり、タイの観光シーズンもピークを越え、やや落ち着きを取り戻したように思えます。
春節の観光客とともにやってくると予測されていた新型コロナウイルスCOVID-19は、事前に言われていたほどの驚異ではなく、陽性者や重症者が増えたというニュースも現時点ではありません。これに関しては「まったく」という言葉を付け足してもいいくらいで、なんの騒ぎにもなっていません。病院のベッドが満床になったというニュースもありません。いまこうやってみてみると、私たちはいったいなにを恐れていたのか不審になるほどです。
日本も似たようなものなのか、マスクをはずそうという動きが始まっていますね。ここタイでは一部の公共施設を除いて着用の義務はなくなっていますが、付けていないのは外国人くらいで、タイ人は着用者のほうが多い状況です。その理由は、着用が習慣になっていることもありますが、大気汚染が深刻化したことにあります。
いまタイ国内で最も深刻な脅威はCOVID-19ではなくPM2.5です。この微小粒子状物質がタイの首都バンコクを中心に広く濃密に充満し、危機的な状況を作り出しています。
現在のタイは季節的には乾季にあたり、雨は降らず空気は乾いています。天候は快晴で見上げる空は青い……はずなのですが、実際は黄色くなっています。微小すぎてPM2.5そのものは見えませんが、はっきりわかるのは朝夕で、空が真っ赤に染まります。夕焼けだから当然と思われるかもしれませんが、空全体が一様に赤黒くなっていて、これだけを見ると天変地異の前触れのようにも思えてきます。
こうしたことを受け、タイの保健省は国民に対して外出時のマスク着用を奨励しています。タイに来てマスクをしているタイ人を目にしたら、それはCOVID-19感染予防でもあり、PM2.5対策でもあると思ってください。観光で屋外に出る際は、たとえ反マスク派の方であってもマスクの着用をおすすめします。
●国名: タイ
タイからはじめるバックパッカー入門 藤井伸二 著