アジアの風だより 第14話 |
タイ北部 メー・サロン
タイ最北部の県チェンラーイの山中にあるメー・サロンは、タイ国内にあってタイではない、そんな町です。
この町に住んでいる人々の大半は中国南部山岳地帯からの移民で、もとはといえば中国本土で反共産活動を続けていた人たちでした。それが中国人民軍の迫害を受けて南下し、ミャンマー国内に逃げ込んだのですが政府軍に追われ、現在はこのメー・サロンに落ち着いているのです。
ここではタイ語がうまく通じません。町には商店が並び、看板が上げられていますが、タイ語より漢字の看板のほうが目立ちます。話し言葉もよく聞けば中国語ですし、レストランや食堂も純粋なタイ料理店より中華料理店やムスリム料理店のほうが多いようにも思います。おかげでタイの山奥というよりも中国のどこかの町に来たような不思議な異国情緒が町全体に漂っています。
また、この町は標高1000メートル近い山脈群の真ん中に位置しています。そのため乾季は寒いったらありません。熱帯のタイにありますが、1月頃は気温が0度くらいにまで冷え込むらしく、人々はセーターを着たりジャンパーを羽織ったりして、まるで日本の冬のような格好で表を歩いていきます。見れば街道沿いに桜の木が植えられていますが、春になるとこれが満開になり、花見客がふもとから大勢やってきて、あたりは大渋滞になってしまうのだとか。
これから雨期の始まりにかけて、タイは1年で最も暑い季節になりますが、避暑をかねて出かけてみるのもおもしろい町かもしれません。ただし道は狭く、メー・サロンの町までは激しく急な上り下りが続きますので、車も体も調子はきちんと整えてから行きましょう。
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