アジアの風だより 第137話 |
ドラえもんのいる寺
タイの中部、スパンブリー県に「ドラえもん寺」と呼ばれる寺院があります。本当は「ワット・サムパーシウ」という名前ですが、境内にドラえもんを飾っているので、そう呼ばれています。ドラえもんの像は巨大なピンク色のガネーシャ像で知られるチャチューン・サオのワット・サマーン・ラッタナーラーム(ワット・サマーン)の境内にも置かれていますが、タイ人の間ではこちらのほうが有名かもしれません。
行ってみると、たしかにいます、ドラえもんが。分身の術でも使っているのでしょうか、いきなり4体います。とりあえず「見ざる、聞かざる、言わざる」のポーズを決めているようですね。ここは遊園地ではなく700年もの歴史がある由緒正しいお寺ですから、彼らは仏教の真理を伝えようとしているのでしょう。
ドラえもんの像はこれだけで、あとは本堂の壁画の中に隠れています。本堂は参拝者のために開放されているので、中に入ってみることにしましょう。仏教寺院の本堂なので、正面中央に仏像が安置されています。まずは正しい作法で手を合わせ、深く頭を下げましょう。それから周囲を見回してください。
本堂内の四方の壁には色鮮やかな曼荼羅が描かれていますが、これがこの寺の秘密であり人気の源になっています。よく見てください。精緻な曼荼羅絵巻の中に、どこかで見た顔が見え隠れしているでしょう。ドラえもんにのび太、ムーミン、仮面ライダー、エイリアンフォースのBEN 10……あちらこちらに彼らの姿が隠れています。
はっきり描かれているのではなく、こっそり見え隠れしているのがポイントでしょう。そうすることによって参拝者は曼荼羅をじっくり観察することになり、結果として仏の教えを深く知ることになるのです。
週末はボランティアが出て、この曼荼羅の秘密を解説してくれるそうです。バンコクから3時間ほどで行ける程度の距離なので、普通の寺院見学に飽きた方は、ぜひ出かけてみてください。
●国名: タイ
●都市名: スパンブリー
●行き方:
スパンブリーの繁華街からバイクタクシーなどを利用して行くのがもっとも簡単。「ドラえもん」と言えばわかってもらえるほど地元では有名。シンダイで車をチャーターして行くのもおすすめです。
バンコク在住著者の藤井伸二が、個人的に「ここはおいしい」という食事処を紹介。ガイドブックにも載っている有名なレストランから入るのがためらわれる路地裏のローカル屋台風食堂まで。
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