アジアの風だより 第118話 |
注目の大地 ブリーラム
イサーンの南端でカンボジアと国境を接するブリーラムは、これまでは普通の田舎町でした。大型で迫力のある石造りのクメール遺跡カオ・パノム・ルンがあることで知られていましたが、それは郊外の田舎の僻地にあるため、ブリーラムには行っても市街にまで足を向ける外国人はほとんどいませんでした。
しかし、時代は変わりました。いまブリーラムは遺跡以外の話題と施設で外国人を呼び込もうとしています。
その第一がブリーラム・ユナイテッドFCです。サッカーのタイ国内一部リーグ、タイ・プレミアリーグに属するチームで、リーグ戦は2013年より2連覇中。国内カップ戦は常勝、AFCチャンピオンズリーグは常連という強豪チームです。
ホームでの試合はもちろんこのブリーラムで行われますが、そのスタジアムがあきれるほど立派。ニュー・アイモバイル・スタジアム、別名“サンダー・キャッスル”と呼ばれるそこは収容人数3万200人以上の大スタジアム。繁華街のはずれに忽然と姿を現す外観の迫力は敵チームを確実に圧倒します。試合のある日はバンコクの北バスターミナルから専用の応援バスが出るといいますから、気合いの入り方は十分以上。ブリーラムの知名度はこのブリーラム・ユナイテッドFCの活躍に比例して確実に高まっています。
もうひとつは、このスタジアムの裏手に広がるサーキットです。チャーン・インターナショナルサーキットと命名されたそこは国際自動車連盟の規格を満たした全長約4.5キロの本格派コースで、すでに二輪車のスーパーバイク世界選手権が開催され、多くの観客を集めました。ここまで立派なコースはタイ国内にはありません。そのため必然的に、ここがタイ国内モータースポーツの聖地となりつつあります。
これまでイサーンといえば乾いた大地と農業くらいしか思いつくことはありませんでしたが、これからはスポーツ産業の王国となるかもしれません。その中心がブリーラムになるとは、いったいだれが予想したでしょう。いまのところ、これら以外に目新しいものはありませんが、遺跡見学の行き帰りに寄ってみるのもおもしろいですよ。
●国名: タイ
●都市名: ブリーラム
●行き方: バンコクの北バスターミナルからエアコンバスで約6~7時間。鉄道はフアラムポーン中央駅からタイ国鉄東北線南線でブリーラム駅まで行くことができる。空路はLCCがドン・ムアン-ブリーラム空港間を結んでいる。
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