アジアの風だより 第116話 |
ピマーイ歴史公園
タイ国内にはアンコール王朝時代の遺跡がいくつもあります。規模は総本山である隣国カンボジアのアンコール・ワットにかないませんが、その縮小版であれば、いつでも見に行くことが可能です。
しかし、気軽にというわけにはいきません。遺跡はどれもアンコール・ワットにつながる古道上、つまり同遺跡の近くにあるため、カンボジア国境の近くに集まっています。バンコクからであれば東北部イサーン地方にまで出向かなければ、保存状態のいい遺跡にはたどり着けません。
バンコクからもっとも近く、もっとも美しいアンコール遺跡となると、ナコーン・ラーチャシーマー県内のピマーイ遺跡になるでしょう。11世紀から12世紀にかけて建造されたと見られる石造りの寺院で、遺跡を含めた町全体が極めて精緻に設計されています。スケールは小さいものの、総本山アンコール・ワットと同じレベルの力が入れられていることから考えれば、この場所が同王朝にとっていかに重要視されていた場所かがわかるはずです。
中心となる遺跡群は歴史公園として整備されています。南側の入口から足を踏み入れ、中央に向かって歩いて行くと、蛇神ナーガに飾られた立派な橋が見えてくるでしょう。その階段を登り、石造りの回廊を抜けると、目の前には三基の仏塔が立ち上がり、荘厳な気持ちが高まるはず。敷地内に敷き詰められた芝の緑も美しく、整備状態の良さがうかがえます。
遺跡の見学を終えたら町のはずれにある国立博物館にも足を延ばしてみましょう。ピマーイとこの周辺の遺跡から発掘された芸術性の高い彫刻や宗教的な遺物が広い敷地に整然と展示されています。いまから一千年以上前、のどかなだけのこの田舎町に先進の文化都市が築かれていた事実がどうにも信じられません。
クメール遺跡は、このあたりにまだいくつもあります。どこも交通の便が悪いのが難ですが、冒険家の気分になって周辺を探索してみてはいかがでしょうか。このピマーイ遺跡が気に入ったというなら、お隣のブリーラム県にあるカオ・パノム・ルン遺跡なども、とりあえずは行っておきたい場所ですね。
●国名: タイ
●都市名: ナコーン・ラーチャシーマー(コラート)
●行き方: ナコーン・ラーチャシーマーのバスターミナルからピマーイ行きのバスに乗って約1時間から1時間半。バンコクから日帰りで行けないこともありませんが、無理しないほうがいいでしょう。
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