アジアの風だより 第113話 |
チェンマイ
ひさしぶりにチェンマイに行ってきました。高い山々に囲まれたタイ最北の県ですから朝晩の気温は低く、国内でも有数の避暑地としても知られている町です。全国的に気温が下がる年末年始は冬を感じられるほどの寒さになり、常夏の国タイにいながら異国気分を味わうことができます。
そのチェンマイはいま中国大陸からやってきた大勢の観光旅行者に席巻されています。いやいやまったくものすごい数! 伝えに聞いてはいましたが聞くと見るでは大違い。まさにそこらじゅうにいると言っても間違ってはいません。それどころか「チェンマイに行く=中国人の団体と行動をともにする」と言ってもいいでしょう。
どうしてこんな事態になったかといえば、中国本土の景気の良さもありますが、それに加えて中国で製作されたコメディ映画の舞台になったのがチェンマイだったからです。その映画が大当たりして──ちなみにタイ国内でも大当たり──結果として中国国内でチェンマイ旅行が大ブームとなったのです。
長い間チェンマイは、名前のわりには訪れる観光客の数が多くありませんでした。フラワー・フェスティバルやソンクラーンなどのイベントのときは集まりますが、それ以外ではけっこうガラガラ。しかも町の規模に比してホテルの数はやたらと多く、シーズンオフ時は閑古鳥が盛大に泣いていました。一時は地元出身のタクシン氏が首相となり、インフラ整備を中心に予算が投入されて活気づきましたが、同氏だけではなく妹までもが失脚し、またもや向かい風が。そんな具合で困っていたところにこの中国大旋風が巻き起こり、観光業界を中心にかつてないほどの大景気となりました。
このブームは今後どうなるのかはわかりません。しかし、ここ当分は中国人団体がこの町の中心を占めるのは間違いないでしょう。チェンマイは静かな小京都などと呼ばれますが、真の憩いを求めたいなら別の場所を探すのも方策かと思われます。
●国名: タイ
●県名: チェンマイ
●行き方:
バンコクからチェンマイまでの空路はタイ航空を筆頭にバンコク・エアウエイズ、LCCのエア・アジアなど多数が乗り入れている。バスの本数も多く、夕方からの便を中心にエアコン、ノンエアコンの全クラスが往復。鉄道は特急・急行・スプリンターを含めて1日7往復。寝台特急列車もある。航空券などの予約も含めたチェンマイ観光のお問い合わせは弊社まで。
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