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旅行会社こぼれ話 第29話

タイの名所探訪 Vol1.「カオプラヴィハーン」

旅は道連れ・・・

昔々、私がまだ学生だった頃のお話です。

遺跡巡りが大好きだった私は、カオプラヴィハーンというカンボジア領内にあるクメール遺跡に行きました。

カオプラヴィハーンはタイとカンボジアの国境付近にあり、どちらの国のものか国際裁判で争っており、ちょうどその頃カンボジア所有という判決が下りたのです。ところがこの遺跡、カンボジアからでは首都プノンペンやアンコールワットからとても離れており、森の中なので公共の交通手段がありません。

そこで観光客の為に、タイ側から入ることが許可されたのです。これは拝観用ですので、タイ出国、カンボジア入国の手続きをせずに入ることが出来ます。つまりパスポートが必要ない、ということですが、タイ人に限っのこと。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、タイでは外国人はパスポート携帯義務がありますので出入国手続きはありませんが、当然持っていなければなりません。

学校の休みに合わせてタイの東北地方を回っていた私は、コラート(ナコーンラチャシーマー)から足をのばして、この遺跡を見学しに行くことにしました。コラートのTAT(政府観光庁)で偶然知り合った、日本から来た大学生の男の子も一緒でした。

彼がTATの受付でカオプラヴィハーンへの行き方を聞いているところに偶然居合わせ、目的地が同じということですっかり意気投合して、それでは明日一緒に行こう!ということになりました。旅は道連れといいますが、特に彼は私がタイ語を話せるということで、よい道連れ兼通訳が出来た!と思ったようでした。

翌日コラートからいくつかバスに乗り継ぎ、どんどん田舎へ進み、そして小さな市場で降ろされました。ここからはバスがないので、ソンテウをチャーターして行きます。

だいぶ進んだ頃、道路にゲートがあり、私たちの乗ったソンテウが止まりました。そして兵士のような人が現れ、私たちを見て外国人だと分かると、パスポートの提示を求めたのです。

大学生の男の子が差し出したパスポートを見た後、私の方を見て

「パスポートは?」

と言いました。ところが私はパスポートをこの東北の旅に持ってくるのを忘れていて無かったので、

「マイミー(無い)」

と言いました。

「でもパスポート無しで入れるって聞いたんだけど。」

と言うと、兵士は

「それはタイ人の場合だ。おまえパスポート無いのか?どこにあるんだ?」

と聞くのでバンコクのアパートだと言うと、顔色を変えてゲート側の交番みたいな部屋に走っていきました。すると2,3人の兵士がやって来て、またパスポートは持ってないのか、と聞いてきます。

ここを抜けられなければ、あのカオプラヴィハーンの遺跡は見られません。私たちはこれはやばいことになった、と思い始めました。私は必死で、パスポートは無いけど、この遺跡が見たくて遠く(?)バンコクからやってきたんだ、ということを知っている限りのタイ語で説明しました。一人の兵士が「どうしてパスポート忘れたんだ。」と言ったので、しばらく考えて、

「私は忘れん坊なんです・・・。」

と答えました。

すると怖い顔をしていた兵士たちが、忘れん坊という単語を聴いて笑い出しました。この単語はちょうど学校で習ったばかりで、私にぴったりの単語だ!と思ったのですが、その通りでした。そして兵士の一人が、

「そうか、忘れん坊かぁ。よし、君たちはカオプラヴィハーンに入ってもいいが、その代わり私が一緒についていく。」

と言って隣の男の子のパスポートを取り上げ、

「これはここで預かる。帰りに返す。」

と持っていってしまいました。

その兵士は一緒にソンテウに乗り込み、かくして私たちと兵士1名はカオプラヴィハーンの入り口へ進んでいきました。兵士は意外に親切で、

「あっちを見ろ、ヘリが壊れている。」

だの

「こっちがカンボジアで、あっちがタイだ。」

などいろいろ説明してくれました。

私は初めて見るカオプラウィハーンの大きさと壮麗さに感激していました。

「やっぱり苦労してきた甲斐あったねえ。」

と男の子に言うと、彼は

「僕のパスポートどうなったんだろう。本当に帰り返してくれるのかなあ。」

と心配そうでした。

見学を終え、ゲートでちゃんとパスポートも返してもらい、その兵士にお礼を言って私たちは無事に帰路につくことが出来ました。

 彼が人質代わりにパスポートを預けてくれたおかげで、私はカオプラヴィハーンを見学することが出来たのです。彼にとってはいい迷惑でしたが、私はやはり旅は道連れだと実感しました。

しかしいつも彼のような親切な人に会えるとは限りません。特に地方を旅行される際には、パスポートを持って行かれることをお勧めします。


Written by 椎名命