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旅行会社こぼれ話 第2話

ソウルでパチンコ嫌いになった添乗員

その昔、韓国ツアーの添乗でソウルへ行った時の話。

ご年配の方が多いツアーなので、観光中は特に離ればなれにならぬよう十分に注意はしていたものの、ある時バスに乗り込んで人数を数えると2名足りない事が判明。ガイドをバスに残し、来た道を戻るようにアチコチ捜しまわるがいない!見つからない!

折りしも小雨がパラつき、肌寒くなってきたが走り回る私は汗が吹き出してくる。だがとにかく見つけないとならない。ノドはカラカラ、身体は汗と雨でビショ濡れ。あせる!しかし何処にもいない!!

ひょっとして、もうすでにバスに戻って来ているかもや知れぬと今度は逆にバスに向かって全力疾走。まだ戻ってない。いない!その時、ガイドいわく----- なにも他のお客様の前でどなるように言わなくても良いものを------

「添乗員さん!そろそろこの辺で日本に対するデモが始まるから急いで!」

そんな事を言われたって-----!他のお客様の視線が矢のように私に突き刺さる。その目はあたかも

「何してんだ、この添乗員は!?」

の如し。『オラ、何もしてねえだ----』 と弱気になるが、ファイルその他の添乗員グッズをバスに放り込み、まさに涙の形相で再びそこいら中を駆けぬけ、走り回る。

だが、とにかくいないのである。雨脚は次第に強くなり、すでにもう1時間近くになる。警察への連絡------大使館への報告------本社へも電話しないと------私の顔は、雨だか汗だか涙だか、果てはヨダレ(?)だか判らぬがとにかくビチョビチョ!ちなみに周囲にいるソウルの人たちは、傘の下から怪訝そうな視線を私に浴びさせてくる。

とうとう雨脚の強さに負けて、街の一角のひさしの下に避難。フト気がつくと日本で言うところのパチンコ屋の前。さて、どうしようか、まずはやはり警察へ連絡して云々などと考えていると、

「あー添乗員さん、どうも、どうも。」

振り向くと、祈るようにして必死に捜し回っている2名ではないか!
言葉など出ない私に向かって、いわく、

「いやー日本のパチンコと同じなんだねえ、ちょっとスッちゃったけど楽しかったよ。この雨じゃ濡れるから、ここで待っていたんだよ。」

待っていたって一体何を? 一体誰を?

良かったあ!! と思った瞬間、プロの添乗員の表情に早変わり。何事もなかったように

「さあ、皆さんがお待ちですから。」

と、雨の中を小走りでバスへと案内した私。

バスへ無事に乗せて、とにかくも次の訪問地へ向かう途中、お客様より一言声がかかる。

「添乗員さん、夕方パチンコ屋へ連れて行って下さい。」

ビショ濡れの引きつった笑顔で応じる私の心中を察して下さる方、どなたかいらしたら是非ご連絡下さい。

Written by MR.キャメロット